管理栄養士のための食品衛生学・食品衛生学実験

国家試験に合格するだけでなく、社会に出た後に“使える”食品衛生学の記録

【食品衛生学実験】油脂の変質試験「酸価の測定」「過酸化物価の測定」「TBA値の測定」

この実験では、新鮮油と常温で長期保存により酸化した油①、加熱により酸化させた油②の3種類を比較することにより、食品衛生法での規格基準値を実感するとともに、酸化の原因によって酸値(AV)、過酸化物価(POV)の値が変わることを知る。

さらに、酸化によりTBA値の値がどのようになるかも確認する。

 

1.酸価

酸価(AV)は、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。酸価は油脂中の遊離脂肪酸の量を示すものと考えてよい。精製の工程で遊離脂肪酸は除去されるため精製油の酸価は非常に低い。一方、精製していない油脂中には遊離脂肪酸が含まれているため、酸価が高い。

保存状態が悪いと加水分解または酸化により酸価が上昇する。また、調理により長時間加熱された時も加水分解がおこり、酸価が上昇する。

 

【試料】 

新鮮油、放置油、加熱油

【実験原理】

油をエタノールエーテル溶液に溶かし、遊離脂肪酸を水酸化カリウムエタノール溶液で中和滴定する。

【試薬】

① 50% エタノールエーテル溶液:50mlエタノールと50mlエーテルを混合する。

  • 1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液
  • 05 mol/Lシュウ酸標準溶液:シュウ酸二水和物( (COOH)2・2H2O;分子量126.07;価数 2; グラム当量 63.03g)0.63gを100 ml 容ビーカーにとり、水で溶かしたのち、100 ml 容メスフラスコに移し、定容する

④ 1% フェノールフタレインエタノール溶液

【実験方法】

a.0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の標定

①0.05 mol/Lシュウ酸標準溶液5mlをホールピペットでとり、100ml容三角フラスコに入れ、指示薬(フェノールフタレイン溶液)を2~3滴入れる。

②ビュレットから、0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を滴下する。終点近くになったら、半滴~1滴ずつ加えてよく振る。かすかに赤くなり、30秒間色が消えない点が滴定の終点である。

以上の操作を2回繰り返して、平均値を求める。空試験の必要はなし。

           

            FKOH =5/a (有効数字4桁) 

  a = 0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量の平均値 (ml)

 

 

b.酸価の測定

①100ml容三角フラスコに試料油10gを新鮮油は2連、放置油、加熱油は1連ずつ精秤する。

②ドラフトの中でメスシリンダーを用いて50% エタノールエーテル溶液30mlを加えて静かに攪拌して溶かした後、栓をする。

③指示薬(フェノールフタレイン溶液)を2~3滴入れる。溶液が微紅色になるまでビュレットから、0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を滴下する。かすかに赤くなり、30秒間色が消えない点が滴定の終点である。以上の操作を各試料につき行う。

空試験として、50% エタノールエーテル溶液30mlについても同様に操作する(1回のみでOK)

c.酸価の算出:   

 酸価(AV) =(5.611 × (B - B1) ×FKOH  )/    W   (小数第3位を四捨五入) 

       

B  = 0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量(ml)

B1 = 空試験の滴定量(ml)

FKOH =0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の力値(ファクター)

W  = 試料採取量(g)

5.611= 0.1 mol/L水酸化カリウムエタノール溶液中の水酸化カリウムの重量(mg)

 

 

 

 

 

2.過酸化物価

 過酸化物価(POV)とは、油脂1kg中に含まれる過酸化物のミリグラム当量(meq/kg)数をいう。油脂が酸化変性すると、多くの過酸化物を生じる。本実験では過酸化物がヨウ化カリウムと反応して生じる遊離ヨウ素を、チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定するヨウ素滴定法を用いて過酸化物価を測定し、油脂の劣化を判定する。

【試料】 

新鮮油、放置油、加熱油

 

【試薬】

・イソオクタン・酢酸混液:イソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン)と氷酢酸を2:3の割合で混合する。

・飽和ヨウ化カリウム溶液:新しく煮沸し室温まで放冷した蒸留水に、過飽和となる量のヨウ化カリウムを溶解させる。用時調製の上、遮光容器に保存する。

・デンプン溶液 デンプン:1gに少量の水を加え、均一なペースト状になるようかき混ぜる。かき混ぜながら熱水 100 mLを加え、沸騰させないよう注意しながら透明になるまでかき混ぜつつ加温する。冷却後、ろ紙でろ過した後に冷暗所に保存する。

・0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液:市販の0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム標準液を水で正確に10倍希釈する。用時調製する。

【実験方法】

  • 油脂試料5 gを200mL三角フラスコに精密に量り取り(新鮮油は2連、放置油、加熱油は1連ずつ)、イソオクタン・酢酸混液35 mLを加えて溶解する。溶解液が均一にならない場合には、イソオクタン・酢酸混液を適宜加え、溶解液が均一になっていることを確認する。

②飽和ヨウ化カリウム溶液1 mLを加え、直ちに共栓をして1分間振り混ぜた後、室温・暗所の条件下(実験台の下の扉内)で5分間静置する。(静置中は扉を閉めて遮光すること)

③蒸留水75 mLを加え、激しく振り混ぜた後、デンプン溶液1 mLを加え、これを指示薬として0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液により滴定する。滴定は十分に攪拌しながら行い、デンプンによる青色の消失時を終点とする。

④試験溶液とは別にブランク試験(油脂試料を用いない空試験)を実施し、測定値の補正を行う。

 ↑ 過酸化物価測定の実験の写真

 

過酸化物価は、滴定に要した0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の液量から、下式により算出する。

過酸化物価=(a-b)×F×10 /油脂試料量(g)

a:検体試験区の滴定に要した0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)

b:ブランク試験区の滴定に要した0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)

F:0.01 mol/Lチオ硫酸ナトリウムの力価

                          (小数第3位を四捨五入する)

 

 油脂が変質するとマロンアルデヒド、ジカルボニル等が生成する。これらの物質を酸性条件下でチオバルビツール酸と加温して反応させると、530nm に吸収をもつ赤色色素が生じる。この赤色色素の吸光度を測定することにより、油脂の脂質過酸化状態を判定することができる。

【試料】 

新鮮油、放置油、加熱油

【実験原理】

酸性条件下での加熱で、マロンアルデヒドおよびアルケナール類、アルカジエナール類とチオバルビツール酸が反応すると、赤色色素が生成する。

【試薬】

TBA試薬:チオバルビツール酸0.7gを水60mLに加温して溶かし冷却後、蒸留水40mL、氷酢酸100mLをメスシリンダーで加える。冷暗所に保存し、1週間以内に使用する。

【実験方法】  

  • 試料2gを試験管に新鮮油は2本、放置油、加熱油は1本ずつ精秤する。(対照も同時に行う⑤参照)

②10mlホールピペットTBA試薬10mlを加える。60~70℃の湯浴中で、2分間加熱する。

③シリコン栓をして滑り止め付き軍手をし、2分間激しく振り混ぜたのち、栓をとり、アルミホイルでふたをして、ブロックバスで30分間加熱する。

④水に浸けて冷却後、下層を駒込ピペットでガラスセルに移す。530nmで吸光度を測定する。

試料を含まないTBA試薬10ml についても1本試験管に採って同様に操作し、対照液にする。(ただし、2分間の振とうは不要。) ※試料溶液試料を含まないTBA試薬(対照液用)は同時に行うこと。

チオバルビツール酸価の算出       

 チオバルビツール酸(TBA価) = 吸光度/サンプル量 (g)  

(小数第3位を四捨五入)

 

★この実験のポイント★

油脂が変質するメカニズムを理解した上で考察する必要がある。

油脂が変質すると、過酸化物ができる。過酸化物価はこれを測定する。

しかしながら、過酸化物はその後徐々に分解し、アルデヒド・ケトン・短鎖脂肪酸などの二次生成物を生ずる。

つまり、過酸化物量は一度上昇するが、上記の分解により上昇した後、徐々に減っていく。そのため、酸化スピードの速い加熱油は、過酸化物価の値は放置油の値より低くなるはずである。

また、考察のポイントは、油脂そのものや油脂を使う食品にはJAS法などで酸価や過酸化物価の基準値が決められている。しかしながら植物油脂、例えばサラダ油は賞味期間が1年ほどある。賞味期間のうちは上記のJAS法で定められた基準値を順守する必要がある。店頭は光もあたり常温で販売されているにもかかわず、なぜ酸価の値が基準値以下なのか、そのためにどのような工夫がされているかを調べて考えることが必要である。

 

 

 

【食品衛生学実験】食器の汚染分析

【試 料】

・食器(材料・形状の違うもの:汁椀、湯飲み、ガラス、スープ皿、小鉢、白皿)×3つ

 

【実験原理】

 エチルバイオレットはLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)などの陰イオン界面活性剤と化合して、青色の化合物を作る。これを有機溶媒(トルエンまたはキシレン)に抽出して比色する。

 

【試 薬】

①エチルバイオレット(廃液)

②酢酸緩衝液

③ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)標準溶液(5ppm)

④キシレン(廃液)

 

【実験方法】

(1)試験溶液調整

①洗浄液を約1.5mLスポンジに加え、泡立てて洗浄する。

②洗浄後、流水で5秒間すすぐ。

 A:洗剤(原液)による洗浄

 B:規定濃度に希釈した洗剤による洗浄

 C:原液を2倍に希釈した洗剤による洗浄

①上記A~Cの容器に熱湯(蒸留水)約10mLを食器に入れ、全体に行き渡るようによく動かす。

②3回繰り返し、50mLメスシリンダーに入れ、正確に30mLとする。(A・B・Cそれぞれ調製する)

この液を試料溶液とする。

③試験管を2本用意し、試料溶液10mLをホールピペットでとる。

  (A・B・C×2本=6本)

 

 

(2)標準液の調整 

 5ppmのLAS標準溶液を使って、ビーカーに下記の希釈標準液をつくる。

LAS濃度(ppm)

0

0.5

1.0

1.5

2.0

5ppm標準溶液採取量(ml)

0

3

6

9

12

純水採取量(ml)

30

27

24

21

18

 各濃度の標準液10mLをホールピペットで試験管に2連ずつとる。

(3)合成洗剤の測定

①(1)、(2)で調製した試験管にメスピペットで酢酸緩衝液0.5mL、駒込ピペットでエチルバイオレット0.2mL、ホールピペットでキシレン5mLを加える。シリコンゴムの栓をして50回上下に激しく振り混ぜる。

③2層に分かれたら、上層(キシレン)を1mL駒込ピペットでセルにとり、611nmで吸光度を測定する。2本の吸光度の平均値を求め検量線から合成洗剤の濃度を求める。(小数第3位四捨五入)

 

【授業のポイント】

1.検量線の作成

検量線の相関係数を確認する→0.95未満の場合は外れ値があるので、その外れ値を除外し、相関係数が0.95になるまで繰り返す。

2.検量線をもとに試料溶液の濃度を算出する

3.考察では、合成洗剤の残留について書くとGOOD

 

【食品衛生学実験】食器の洗浄度

食器は食事を供する際に必要であり、食品を盛りつけたり、直接口に接するものであるため、その品質を知り、正しく取り扱うことが必要である。また、繰り返し使用するため、洗浄が必要となる。

洗浄が不適当な場合は衛生上非常に問題である。一般家庭では、食器の数が少ないのであまり問題ないが、大量の食器を使用する集団給食施設や飲食店では洗浄が不十分になることも考えられる。特に油脂類で汚れた食器では残留が著しく、食器洗浄器を使用した場合、完全に洗浄できていないことも考えられる。

洗浄した食器に糖質、脂質などの食品成分が残留しているか否かを試験することは衛生上重要なことである。今回の実験では洗浄後の食器にどの程度・どの部分に残留物があるかを知り、正しく効率的な洗浄方法を考える。

【試料】

実習室の各種容器(洗浄したもの)

 

(1)デンプン性物質の残留

【実験原理】

 ヨウ素溶液(I2-KI溶液)にデンプンの希薄溶液を加えると、デンプン―ヨウ素複合体ができ、青色(青紫色)を呈する反応によって定性する。

【試  薬】 0.05mol/Lヨウ素

【実験方法】 

脱脂綿に0.05mol/L-ヨウ素液をひたして、ピンセットにはさんで食器全体に塗りつける。裏面や糸じりもふく。

2~3分放置した後、軽く水洗いし、青むらさき色に染まる部分(デンプン性残留物)の有無を観察する。

 

(2)脂肪性物質の残留

【実験原理】

 脂質に溶解する色素を用いることにより、残留する脂肪部分を呈色する。

【試  薬】 0.1%クルクミンアルコール溶液

【実験方法】 

  食器の表面を、クルクミン色素をしみこませた脱脂綿をピンセットにはさんでふく。裏面や糸じりもしっかりふき、2~3分放置した後、軽く水洗いする。

ハンディUVランプ(365nm)で観察する。(残留脂肪がある場合はその部位が黄緑色の蛍光を発色する。)

脂肪の残留

 

 

 

 

(3)たんぱく質性物質の残留

【実験原理】

 ニンヒドリンアミノ酸に作用するとアミノ酸が脱アミノ化し、生成したアンモニアニンヒドリンと反応して紫色の物質を生成する。

【試  薬】 ニンヒドリン溶液:0.2%ニンヒドリン・n-ブタノール溶液

【実験方法】

ニンヒドリン溶液 約5mlを食器に入れ、全体にいきわたらせる。

②溶液を試験管に移し、ヒートブロックで1~2分加温した後判定する。(たんぱく質の残留がある場合は紫色を呈する)

【食品衛生学実験】食品の鮮度 鶏卵の鮮度試験

【試 料】

 鮮度の異なる鶏卵:新鮮な鶏卵1個、古くなった鶏卵1個 
 

鮮度検査として以下の項目試験を行った。

1.ハウユニット(Haugh unit)

 

 ノギスを用いて、平板上に割卵した卵の濃厚卵白高(mm)と卵重(g)を測定する。

濃厚卵白の高さと卵重から、ハウユニットを次式で算出する。

HU=100×log(H-1.7W0.37+7.6)  HU: ハウユニット H: 濃厚卵白高 W: 卵重

 

 

.卵黄係数(Yolk index)

卵黄係数(Yolk Index)は平板に割卵した卵黄の高さを直径で割った値として算出され、1930年代には卵の内部品質指標として用いられるようになった。時間経過とともに卵黄膜の繊維組織が緩くなり膜の強度が失われることから、劣化が進むと値は低下する。

平板上に割卵した卵黄の高さ(YH)と直径(YD)から卵黄係数(YI)を次式で算出する。

 YI=YH/YD  YI: 卵黄係数  YH: 卵黄高さ  YD: 卵黄直径


3.比重による検査

 6%食塩水に殻ごと浸漬させ、卵の浮き方を観察する。

4.卵白のpH

割卵後、水様性卵白のpHを測定する。

 

検査の順番は、

比重(割卵すると検査できない)→卵白のpH→ハウユニット→卵黄係数

 

【結果】

それぞれの検査ごとにどちらが新鮮かを判定した後、最終結果を出す。